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当たり前の幸せを忘れないように。


「朝」

あかあかと激昂する生身の塊、
緩やかな逆光の丘にすくむ一台の自転車、
跨っていた幼なじみを、放課後まで待つの。

カーテンは所々に濁った染みをつけ、
土埃も靴跡さえも許しているのに、
新しい色の風に、じゃぶじゃぶ濯がれて。
大いなる縁取りから、小さな影の揺らめきへ。


「昼」

肺が酸素を捕まえられない。
目の前は空気ではないのだろか。
何故こう苦しいの、ああ、何故、お天道様。

昼の詩人はまだ混乱している、
自分とそうでないもの、
地平線と雲漉く空のかたち、
生きているものと業を終えたもの。
今流れていくものと「たぶん…」の過去。

定義の外、運命の内に、道があるのだろか。
誰かの笑顔に会いたいよ、9階より上で。


「夕」

漢字が象徴するものを、
外国人に、解説しているうちに、
窓の下の建物は、薄紅色に染まって、
積み木のよな思考パタンも皆いっしょくた。

まだマシだから。ここだって狭くない。
夕焼けと、燃えてしまえば雲の上。

誰かだけに伝えたい、とっておきの場所。


「夜」

一寸の虫たちが、おそるおそる羽をこすり始め、
地味なよろいを薄明かりになじませて、
無数の本能をしきつめたベッドは、
それはそれはやわらかく、
私は眠る、それはそれは心地よく。

殺さなかった今日を憐れむように、
悩みごとの殆んどは裾をまくり上げて、
後は、ふぅっと白く吐いて、夢は寄る辺。

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