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岩があるので渦を巻いている
ほら、あの少し黒くなったところ
本当はあっちが下流じゃ

水は小石もゴミも砂も
みんな転がしていくからね
川底はふわふわしている
一歩出せば幾億の砂と微生物が舞い上がり
足場がズズッと潜り込む
「あ、魚」

きらめく水中眼鏡を被って
思い切りよくお辞儀をすると
そこには見たことのない音が
そして幾つかの生き物の透明な揺らめきが

ああなんて恵まれた天気
水を浴びなきゃアツイアツイで焦げちゃう
「お父さんもお浸かりになったらどうですか」
お祖父ちゃんおいでよ

もう一度心に決めて
大きく息を吸い込んで、一気に
待って待ってと魚になって追いかける
あの小さくて冷たい命に触れるため

「網でも持ってくりゃ取れたんじゃがの・・・」

ふいにザッブンと水飛沫
見上げれば、橋の上からニ三人の男の児達が
今の子に続いて水面を目指している
「まぁぁ!大丈夫かしら!?」
そのときお母さんは全ての子のお母さんになって
10m上空に目を細める
「体当たりで生きていくのが大切じゃけーの」
お祖父ちゃんはむかし男の児だった

「あれは鮎じゃ」
向こう岸まで行っても良いかな
道路まで登るきつい勾配の斜面に耐えて
緑の木々が伸びたいように伸びている、見えるよ

ふいに目の真下で魚を見つけたと思えば
その後ろには、二匹、三匹、ん、
いや四匹もついてきている!
動いては駄目だ砂が誤魔化してしまうから

「鮎、鮎」
待って、待って!
恐くないだろうか、僕達なんて

「いいや、そいつは鮠じゃ・・・」


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