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(即興1)
一編の詩を絞り出して一杯のオレンジジュースを飲み
コートを羽織って散歩に出ると
何故か月はいつでも山の端ぎりぎりのところに飾ってあった
研ぎすまされて
あまりに細く
落ち着き払った爪跡だった
随分ご無沙汰だった友達と行き違い
冷たすぎる今日の夜風にお互い声もかけぬまま
少しの間隙ののち振り返るとそこに月の画はない
(即興2)
悪戯に覆う雲が私を試すのだろう
嫌味に笑って光だけが洩れる物語の夜
つまりはあの月が偽物である
(即興3)
まあるい月の夜は
気を付けた方がいい
実は覗き穴なのだ
知っていたかい?
あの穴を抜けると異次元なのだ
自転車で坂道をまっすぐに下っている時も
ライトを点灯しないのはこの為なのだ
気を付けな君も見られているのだ
(即興4)
月ほど自由でないものはない
結局私たちから離れられない
そして月はついに意志を殺した
一切の抵抗をやめ調和を図った
だから月に温度を期待してはならない
(即興5)
月は
常に時空の亀裂に存在するので
見たいときに見られるというものではない
しかし
空想の夜さえも
同じ月が支配していた
(即興6)
あの美しい上弦が 空の谷間に吸い込まれて
「沈みたくないよう、沈みたくないよぅ」
と、言っている
待っていたのに 夢見心地で
「美しいでしょ?少し泣いているけれど…」
それでも貴方は聞かないだろう
(即興7)
昔々美しいお姫様が帰っていったのヨと聞いたとき
私は何を思った
ネオンの間にふと見えた月にも伝説は乗らなかった
暗い道路の先にふと見えた月にも伝説は乗らなかった
生まれた場所でも帰る場所でもないところが月だ
私はお姫様になることが出来ない
私よりもこの枯れ葉の方が遥かに月に近い
伝説を語り継いだ人々はそれぞれ知っていたのだ
銀の木ねじ
アンクレット
陽炎は揺れてた
枯れ草 なすがまま
靴ひもと交わる
僕にもうない ごめんね 愛など
濁った夕暮れ 君よ染まれ
小さな鏡に星二つ
瞬きをしたら
在る筈の瑠璃色を
湖を探した
僕にもうない ごめんね 愛など
暗い旅路 子供の意気地