夏の終わり

これは青空です
「そしてこれは雲です」

近くのスーパーで祭をやっています

吹奏楽団の大きな音楽が街を揺らし
おさまりきらない、正午

たった今、あの木の下へ蝉一匹絶えました
私はまだふざけている

悲しいお知らせが届きます

そしてついに（嗚呼、無責任かもしれない）
三人の心がからっぽになる

そう、たくさんのことを思い出しているのです
けれど、何を言葉にすべきでしょう？

何を伝えることがありましょう？


これは青空です

しらせ

蝉の亡骸を
ぽつり
ぽつり
つないでいくと

気付くと私
駅に立っていた


…ああ

うん

ごめんね


今日は
学校だけど

おばあちゃん
おばあちゃん
ちょっと待ってて

扉が２つある家

あの扉が２つある家は
建てられてすぐ
神様が２匹入ってきた
のはいいが
勢い余ってゴッツンコ

きっと　奥さん
怪我の手当てを
今も続けている

あれから扉は黙ったまんまだ

墓

彷徨いながら辿りつく　白檀の香り
縁側の子には　風が伝える

昼下がりの鐘が鳴ると
去年のように　おととしのように
そしてまた来年のように
誰かが　白い花を摘んでくる

烏のいない　薄く澄んだ青空の下
魂は
ポツンと残される　それだけで
私の吐き出した空気で
死者が呼吸を始めるのです

水は　冷いですか――


家を出てから
あんなにも輝かしい渦の中で
忘れなかった故里
忘れたことなど　ない

優しく笑えるようになった子は
せめられるのを
とっくに覚悟して　掌を合わせるけれど

貴方の知らない世界で苦しんだことを
言い表すような言葉を
どうしても　思い出せない

死んでいるのに
死んでいないと
脅されている日々から

戻って来ました
庭木はもう
荒れていますね

世田谷のベランダにて

濁った屋根の上　ひとりぼっちの神様がいる
山という限りもなくて
どこまで続くだろう　休めない
まだスモッグに揺れている
とっくに　人と人が出会っても良い頃なのに