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ガムランの国へ
二人の夜へ
大好きな小説の中には
「星もないのに」という描写の中にしか
空は出てこなかったのに
そこにあった筈の月を
何故か知っている
ないという形でしか現れない月に
憧れを重ねていたんだと思う

そういえばあの日
月はなかった
あるいは私の記憶から抜けた
街灯一つない夜のほとりで
繰り返される二つの孤独を
諦めるまで
もう少し
回想シーンはいつも
不思議なアングルで切り取ってくるから
光を放たないものを
いちばん覚えた

そうして気付けば
そこは日本で
川沿いの古い温泉街で
煙突と桟の間にギリギリ収まった
きんいろの月
コピとススの音楽
思い出の中にないものが
はっきりと浮かび上がる
影曲がる肌を
そっとなぞる優しさは
嘘偽りのない
欲しかったもの

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風が鳥に絡まって
ひゃあと宙返り


目覚ましは
まだだと
思った

電車は
とっくに
平日へ発った

そろそろ
もぐらの学校が始まる



カーテンを開こう

隣人の歌
のびやかに

のびやかに
このまま
春に

一昨日の新聞が
やっと届いた
それで良かった
事件はもう流れていた

違和感の中で
うつくしく生きる
何ひとつ狂っていない

答えを求めるなら
わたしもそう
言葉を知らないまま
お腹に還りたかったけれど

世界は少しだけ
今日を捨てていく

自分だけおかしいみたい
項垂れる友達を
見ないふりをした
わたしもそう

ああ なんてこと
確かに空は狭いけれど
誰ひとり狂っていない
真正面の山の向こうに弱い掃除機があって
雲と云う雲がみんな吸い取られそうだ
夕暮れの空はそんな三次元の形で世界を包んでいた
淡い人参ポタージュ色の背景に追付いたのは
痩せて、しかも白い月
私は残っていたわずかばかりの誠意をかけて
影の落ちた橋を渡ろうとするが
繋ぎの鉄の隙間がよっぽど広く開いたのをみて
率いた犬をも驚かせて、行くのを拒んだ
その瞬間、何処とも知れぬあちこちから羽ばたきが湧き上がり
あっという間に頭上の空を蝕した
なにかのクライマックスのような叫び
黒い炭――なにかの燃え滓――が散り散りに舞っている
風の僅かな日、だった

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